東京を見渡す52階、ニューヨーク グリルのランチ
パーク ハイアット 東京最上階、52階の「ニューヨーク グリル」。窓の向こうには東京の街並みが広がり、店内にはオープンキッチンの熱気とジャズの音色が行き交う。料理長ベン ウィーラーが手がけるのは、素材の味を前面に出したグリル料理。眺望だけでなく、料理そのものに目が向く店だ。
改修を終えたパーク ハイアット 東京
パーク ハイアット 東京は、新宿パークタワーの上層部に位置する。館内からは東京の街並みを見渡せ、晴れた日には富士山も望める。1994年7月に開業し、丹下健三が設計した建物と、ジョン モーフォードによるインテリアで知られてきた。映画『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台として記憶している人も多いだろう。高さの異なる三つの塔からなり、館内では場所を移るごとに眺めの角度が変わる。現代的な建築の線と、年月を重ねたホテルならではの落ち着きが共存している。
改修の中心を担ったのはジュアン マンク。ジョン モーフォードの当初のデザインを尊重し、素材の色調や質感を見直しながら特注家具を加えた。ホテルらしい温かみと親密な距離感はそのままに、ピーク ラウンジ&バーやジランドール by アラン デュカスも刷新。開業時の個性を消すことなく、現在の使い方に合う快適さと機能を整えている。
52階、眺望と活気のあるダイニング
52階に着くと、ニューヨーク グリルには格式よりも先に、ほどよいざわめきがある。オープンキッチンから伝わる調理の活気に、バーから届くジャズが重なる。黒と白のユニフォーム、真っ白なテーブルクロス、深い黒の椅子が店内を引き締め、壁一面の窓の先には東京のスカイライン。ニューヨークの名所を描いたヴァレリオ アダミの鮮やかな壁画も、この店を印象づける。メニューの軸は、国産牛や魚介を使ったグリル料理。1,600種を超えるワインが揃い、料理にも好みにも合わせて選べる。
料理長ベン ウィーラーの歩み
英国出身のベン ウィーラーは、バッキンガムシャーの田園地帯で育ち、幼い頃から料理に親しんだ。料理人としての出発点はThe Stag at Mentmore。その後、Grand Hotel Kempinski Geneva、アブダビのエミレーツ パレス、フォーシーズンズ ホテル ロンドン アット テン トリニティ スクエアで経験を重ねた。グランド ハイアット クウェートでは料理長を務め、アトランティス ザ ロイヤル ドバイの開業準備にも参加。2024年にパーク ハイアット 東京へ移った。各地で身につけた技術を前に出すより、素材の味をまっすぐ見せるのが現在の料理だ。
ランチは前菜とデザートをブッフェで
ランチは現代アメリカ料理を軸に、日本らしい要素をさりげなく取り入れている。前菜とデザートはブッフェ形式で、明るい時間帯なら街を見渡しながら食事ができる。私が前菜に選んだのは、薄切りのシャルキュトリーと味の濃いチーズ、淡いピンク色の海老。旨味のあるパテ・ド・カンパーニュには、パプリカや人参などのロースト野菜を合わせた。シーザーサラダで軽さを加え、香ばしく焼いたパンと小ぶりのロールパンも少しずつ。量も組み合わせも自分で決められるのが、このランチの気楽なところだ。
ステーキの選択肢に目を留めた夫は、国産牛F1 サーロインのグリルを選んだ。付け合わせは、なめらかなマッシュドポテトとグリーンアスパラガス。香ばしいガーリックチップの歯ざわりに、肉の旨味が溶け込んだビーフジュが重なる。サーロインは柔らかく、付け合わせにも十分なコクがある。奇をてらわず、正面から肉のおいしさを見せる一皿だった。
私は本日の鮮魚のグリルを注文した。皮は香ばしく歯ざわりがよい一方、身はしっとりとしている。魚の下に敷かれたピペラードには野菜の旨味があり、軽くローストした坊ちゃんかぼちゃの穏やかな甘みと、バジルの青い香りが続く。ブイヤベースソースは魚介の味が濃く、スパイスはほどよい。要素は多いが、味の焦点はぶれていなかった。
デザートもブッフェから選び、コーヒーや紅茶を合わせられる。私の皿には、なめらかなムースと生のブルーベリーを添えたモンブランのタルトレット、店のシグネチャーであるニューヨークチーズケーキを載せた。さらに、軽い口当たりのコーヒー風味のシューと赤い果実のパンナコッタを少しずつ。最後に選んだレモンメレンゲタルトは酸味がきりっとしている。濃厚なものと軽いものを、無理のない量で食べ比べられるのがうれしい。
率直な感想
料理は素材の味が明快で、格式のある空間でも構えずに食べられた。ワインを重視する人にも十分な選択肢がある。オープンキッチンの音、バーから届くジャズ、窓外の東京が一続きになるのも、この店ならではだ。眺望を楽しみたい会食はもちろん、東京で少し気分を変えたい日のランチにも選びたい。
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New York Grill