Skip to content

マンダリン オリエンタル 東京宿泊記、眺望と食を楽しむ日本橋の一軒

Florence Consul
Florence Consul ·

日本橋三井タワーの高層階に位置するマンダリン オリエンタル 東京。大きな窓の先には東京の街が広がり、館内には落ち着いた客室から充実したダイニング、眺望を生かしたスパまでそろう。歴史ある日本橋に滞在しながら、現代の東京らしい景色と食をじっくり楽しめるホテルだ。

職人文化が息づく日本橋

ホテルが立つのは、江戸時代に五街道の起点として栄えた日本橋の中心部。三越前駅に直結する日本橋三井タワー内にあり、街歩きにも移動にも便利だ。周辺には日本橋三越本店をはじめ、着物店や刃物店、菓子舗、昔ながらの工房が点在し、その合間に現代的な高層建築が立つ。銀座のメゾンやレストランにも短時間で足を延ばせる。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

38階、東京を見渡すロビー

シーザー・ペリ率いる設計事務所がデザインした日本橋三井タワー。その高層階を占めるホテルでは、窓外の眺めがどの空間にも自然に取り込まれている。38階に着くと、二層吹き抜けのロビーの先に東京の街が開け、空気の澄んだ日には高層ビルの間に富士山も見える。隅田川、新宿、東京スカイツリー®まで見渡す景色は、眼下の都市の密度を忘れさせるほど穏やかだ。館内デザインを手がけた小坂 竜は、ホテル全体を一本の大樹に見立て、自然や四季を思わせる素材と模様を随所に取り入れた。2005年の開業から年月を重ねた今も、簡潔な線と抑えた色調、豊かな自然光によって古さを感じさせない。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

60㎡のマンダリン グランド ルーム

30階から36階には、157室の客室と22室のスイートがある。一般客室は50〜60㎡、スイートは90〜100㎡と、東京のホテルではゆとりのある広さだ。床から天井まで届く窓からは、方角によって東京スカイツリー®、東京湾、銀座、東京駅を望み、晴れた日には富士山も見える。淡い木材や和紙、自然を題材にした意匠、須藤玲子によるテキスタイルを、グレーとベージュにほのかな紫を差した色調でまとめている。

私たちが滞在したのは、60㎡のマンダリン グランド ルーム。明るい色のバンブーフロア、細工を施したヘッドボード、布張りのランタン、浴衣を収めた漆箱、広いドレッシングルーム、エジプト綿のベッドリネンが、住まいに近い心地よさをつくっている。窓に向けて置かれたソファは、刻々と表情を変える東京を眺めるのに格好の場所だった。グレーの大理石と御影石を使ったバスルームには、独立型バスタブ、レインシャワー、ナチュラビセのバスルーム用品を用意。細かな備品も漆箱にすっきりと収められていた。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

ケシキの朝食

38階のケシキでは、東京の街並みを眺めながら、ブッフェとアラカルトを組み合わせた朝食をいただける。品数の多さだけでなく、一品ごとの仕上がりもよい。蟹肉、アボカド、オランデーズソースを添えたポーチドエッグ、魚介と鶏のだしを使ったラーメン、定番の卵料理まで、どれも丁寧につくられていた。とりわけ印象に残ったのはペストリー。薄い層の重なりと軽い口当たりは、パリのパラスホテルにも引けを取らない。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

館内のダイニングを巡る

館内には、フランス料理、広東料理、江戸前鮨、アフタヌーンティー、ピッツァのおまかせコースまで、性格の異なる店がそろう。中央通りに面した1階のザ マンダリン オリエンタル グルメショップでは、エグゼクティブ ペストリーシェフのファビアン・マルタンとヘッドベーカーの中村友彦が手がけるケーキ、パン、ペストリー、サンドイッチ、コーヒーを販売。テラスでも味わえ、持ち帰りにも対応している。38階のオリエンタルラウンジでは、季節のペストリーとセイボリーを組み合わせたアフタヌーンティーを、東京の景色とともに楽しめる。数カ月前に訪れた際の様子は、こちらの記事で紹介している。マンダリン オリエンタル 東京、東京を一望するアフタヌーンティー。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

フレンチファインダイニングのシグネチャーは、青と白を基調に、銀色のスクリーンを配した現代的な空間。料理長のシルヴァン・ジオアナは、フランス料理の古典を踏まえながら、重さを抑えた現在の感覚を加えている。構成の明快な皿は、昼には自然光、夜には東京の夜景を背景に異なる表情を見せる。受賞歴を持つソムリエチームのペアリングも的確で、ソースや食感、余韻をさりげなく引き立てていた。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

広東料理ならセンスへ。料理長の中間 利幸が、プラチナポークのローストや京鴨の二種仕立て、国産の旬素材を使った点心などを、輪郭のはっきりした味に仕上げる。カウンターで鮨を味わうなら、鮨 心 by 宮川がある。樹齢350年以上の檜を使ったカウンターに座り、北海道や豊洲市場から毎日届く魚介が江戸前鮨へ仕立てられていく様子を間近に見られる。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

ひときわ個性が際立つのが、8席のピッツァバー on 38thだ。ダニエレ・カーソンによるピッツァのおまかせコースでは、イタリア産オーガニック小麦を使った生地に日本の旬素材を合わせ、目の前の窯で一枚ずつ焼き上げる。意外な組み合わせにも無理がなく、ひと切れの中で味がきれいにつながっていた。もう少し気軽に食事をするなら、高さ25メートルの吹き抜けを望むヴェンタリオへ。各国の料理を並べたブッフェは、特にランチに人気がある。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

夜はマンダリンバーへ。自然素材を取り入れたモダンな和の空間から東京を眺め、日本橋の歴史や文化を着想源としたシグネチャーカクテルやモクテルを味わえる。街の熱気から少し距離を置きたいときに心地よい場所だ。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

8席のタパス モラキュラーバー

タパス モラキュラーバーでは、8人のゲストがカウンターを囲み、料理が仕上がるまでの手元も間近に見られる。料理長の牛窪 健人によるおまかせは全12品。親しみのある味に異なる温度や意外な食感、モラキュラーの技法を重ね、古典料理から現代料理、各国の食文化までを行き来する。ドリンクのペアリングも用意されている。私たちが体験したコースの題材は、慌ただしく働く東京のサラリーマンの一日。それが次第に夢へ変わっていく筋立てだった。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

最初の「テラリウムに水やり」は、ガラスドームの下に小さな景色をつくった一皿。雪に見立てたクリームの下にずわい蟹を忍ばせ、オシェトラキャビアと土のような黒い粒を散らしている。芽や艶のある葉、歯触りのよい茎、花、赤いラディッシュなど、14種の野菜がそれぞれ異なる食感を見せる。ちらし寿司から着想した料理で、仕上げに鰹を利かせた和酢を5回スプレー。霧状の酸味と塩気によって、蟹とキャビアの風味がくっきりと立ち上がった。

続く一皿は、活気に満ちた築地市場での朝食を思わせる。磯辺焼きは鮨のように手渡され、黒い海苔の中には、表面を香ばしく揚げ、中に弾力を残した餅が収まる。醤油と生のチャイブを合わせ、中心にはチャイブオイルを注入。鮮やかな橙色の北海道産蝦夷馬糞雲丹は濃厚で、ふっくらと膨らませた米の軽い歯触りが、その甘みを引き立てていた。

「ずっと食べてみたかった紫蘇団子」は、小さな庭のような盛り付けで登場する。米の代わりに胡麻豆腐を使い、薄く揚がった衣の中になめらかな芯を残している。大葉の青い香りと田楽味噌の旨味に、淡く燻製した鮑を合わせ、柚子胡椒の香りと辛味で味を引き締めていた。

「和食で小籠包??」は、見た目と口にしたときの感覚が意外な一皿だ。皮はスープに溶け込み、器には肉団子と白くなめらかな鶏白湯が残る。味に深みはあるが、後口は重くない。奈良県産の細いそうめんに健味鶏の旨味を重ね、すだちの酸味を利かせている。

「海と大地の出会い物」は、艶のある大きな緑の葉に、鱗を立てて焼いた甘鯛、黄金色の鶏皮、だしで煮た白アスパラガス、酒とみりんを香らせた海藻を重ねた一皿。小夏の明るい酸味に、凍らせて削った鮟肝の濃厚な塩味が加わる。温かさと冷たさ、柔らかさと歯触りの対比が、一口の中ではっきりと感じられた。

「急ぎのサラリーマン」は、遊び心のある小品。艶やかな黄金色の帽子を、削りたてのアルバ産白トリュフが覆っている。鰹節の旨味と松の実の穏やかな甘み、香ばしさに、白トリュフの芳香が重なる。日本とピエモンテの味が、小さな一皿の中で無理なくつながっていた。

次は、白いご飯に日本式カレーとオマール海老のソースを合わせた料理。大ぶりに切った伊勢海老には淡い甘みとみずみずしさがあり、スパイスの温かな刺激とよく合う。上に載るポーチドエッグは見立てで、豆乳でつくったなめらかな球体を割ると、カボチャの中心が現れる。軽い歯触りの要素も加わり、親しみのあるカレーが細部まで組み立てられた一皿になっていた。

「山椒鴨」は、中心を淡いピンク色に仕上げた京鴨の胸肉に、澄んだジュを薄くまとわせた一皿。山椒の鮮やかな柑橘香が鴨の脂を引き締め、黒ニンニクはバルサミコを思わせる丸みと深さを加える。植物を使った装飾も控えめで、鴨の火入れと香りに意識が向く仕立てだった。

「ファイティングカウ」の主役は、鮮やかなロゼ色に火入れしたA5ランクの宮崎牛フィレ。すき焼きの趣があり、甘辛く艶のあるソースに、肉厚の椎茸、軽く焼いた小大根、生の大根、若い芽を添えている。和牛の細かな脂とソースの強い旨味に、椎茸の土を思わせる香りと野菜の歯触りが変化をつける。エスプーマを合わせることで、余韻には重さを残さなかった。

デザートの「マイクロプラスチック」は、名のとおり一見すると食べ物とは思えない姿で現れる。中がとろりとした温かな焼きおにぎりに、宮崎マンゴーを合わせた冷たいアッサムティーを添えた、温度差のある一皿だ。タピオカの弾力に加え、上に置かれた透明な破片は、薄く揚げた塩味のポテトチップスだった。

続くのは、蜂の巣を思わせるデザート。点心の揚げ物のように黄金色で軽いタロイモのパフに、蜂蜜酒のアイスクリームを添え、きな粉の香ばしさを重ねる。別添えの東京産蜂蜜には花の風味があり、響ウィスキーの樽香が奥行きを加えていた。粉状のパーツや柔らかなマシュマロもあり、さくさくとした歯触りから、ゆっくり溶ける食感へと移っていく。

締めくくりは、茶かコーヒーかを選ぶ食後の習慣を、小さな球体に置き換えたプティフール。濃い茶色の艶やかな表面をかじると、コーヒーを利かせたガナッシュのような味が広がる。グラフィティ風の絵を描いたノートとともに供され、穏やかな甘さと軽い歯触りでコースを終えた。

37階、東京を見渡すザ スパ

37階のザ スパは、眼下の街の速さを忘れられる場所だ。トリートメントルームとプライベートスイートでは、日本やアジアの伝統に着想した施術、シグネチャートリートメント、アート・オブ・ベージングを受けられる。ヒート&ウォーター エリアには、温浴のバイタリティープール、眺めのよいサウナ、クリスタルスチームルーム、アイスファウンテンがあり、温冷浴を自分のペースで繰り返せる。大きな窓越しに東京を眺めていると、旅程の合間に静かな余白が生まれた。

@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo
@Mandarin Oriental Tokyo

滞在を終えて

マンダリン オリエンタル 東京は、高層階からの眺望だけに頼らず、客室、食、スパ、サービスの水準が揃っている。館内にはそれぞれ性格の異なる場所がありながら、過度な演出はなく、日本橋の落ち着いた空気ともよくなじむ。東京の中心で景色と食を重視し、外出だけでなくホテルで過ごす時間も大切にしたい人に向く一軒だ。

気に入った点:

  • 東京を巡る拠点として便利でありながら、歴史ある日本橋の街並みも歩いて楽しめる立地。
  • 品数と一品ごとの質の両面で、これまで東京で体験した中でも特に満足度の高かった朝食。
  • それぞれに明確な個性を持つレストランの充実ぶり。なかでもタパス モラキュラーバーは、食事を目的に足を運ぶ価値がある。

気になった点:

  • 今回の滞在では、明確な不満を挙げるのが難しかった。サービスを含め、どの場面でも高い水準が保たれていた。

基本情報

  • マンダリン グランド ルームは、2026年6月の宿泊で1泊1,100ユーロ。

Mandarin Oriental Tokyo

2-1-1 Nihombashimuromachi, Chuo-ku, Tokyo, Japan Google マップで開く
Mandarin Oriental Tokyo
ホテル (13)
レストラン (15)
アフタヌーンティー (2)