東京「ザ・ステーキハウス」―アメリカの伝統に重なる、日本の緻密さ
ANAインターコンチネンタルホテル東京の「ザ・ステーキハウス」は、格式を意識しすぎず、落ち着いて食事ができる一軒です。温かみのある店内の中央にはオープンキッチンがあり、備長炭グリルの炎と料理人の動きがほどよい活気を生んでいます。アメリカンステーキハウスの王道を踏まえながら、東京の店らしい軽やかさと国際的な感覚を備えています。
15カ月の改装を経たホテル
35年以上の歴史を持つANAインターコンチネンタルホテル東京は、15カ月にわたる改装を終え、新たな装いとなりました。アークヒルズに立つホテルの801室には、日本の手仕事と現代的なデザインが自然に溶け合っています。折り紙の折り目を思わせる幾何学模様、桜をモチーフにしたカーペット、桜色と淡い藍色を基調とする配色は、「東京が開かれていく」という着想に基づくものです。館内には13のレストラン&バーと22の宴会場があり、宿泊客だけでなく、食事や集まりのために訪れる地元の人にも開かれています。相手が必要とすることを一歩先に整える、日本らしいもてなしも随所に感じられました。
気負わず向き合える、選び抜かれた肉
2016年の開業以来、「ザ・ステーキハウス」ははっきりとした個性を持つ店として親しまれてきました。まず目に入るのは、オープンキッチンに据えられた全長3メートルの備長炭グリルです。立ち上がる炎や無駄のない手さばき、声を掛け合いながら皿を仕上げる料理人たちの姿まで、店内の風景の一部になっています。
料理の軸は、正統派のアメリカンステーキハウスを国際的な視点で捉え直すこと。和牛を含む国産牛のほか、オーストラリア産やアメリカ産の肉、旨味を凝縮したドライエイジドビーフまで幅広く揃います。備長炭で香ばしく焼き上げる肉料理に加え、シーフード、サイドディッシュ、季節の一皿も用意。好みの料理を取り分けられる親しみやすさと、火入れの確かさが無理なく両立しています。
定番を中心に組み立てたディナー
この日のディナーは、ボリュームのある定番料理が続きながら、最後まで重さを感じさせない流れでした。最初に選んだのは、ブルゴーニュのドメーヌ・ダヴィド・デュバンによるピノ・ノワール。整った果実味と軽やかな口当たりで、食事の始まりにもよくなじみます。
最初の一皿は、燻製したてのブッラータ。なめらかなミルクのコクに、薪を思わせる香りがかすかに重なります。瑞々しいカラフルトマトやフレッシュハーブ、地中海を思わせる野菜を添え、香りのよいオイルと調味料で味を引き締めていました。軽やかですが、余韻はしっかりと残ります。
続くイベリコハムコロッケは、きつね色の衣が軽快に砕け、中はとろりとなめらか。イベリコハムの濃い旨味に、ほのかなナッツ香が続きます。気軽に取り分けられる、いかにもステーキハウスらしい一皿です。
看板料理のひとつ、ザ・ステーキハウスバーガーも外せません。香ばしく焼いたブリオッシュバンズに、肉汁を保ったビーフパティ、歯切れのよいレタス、フレッシュトマト、味を引き締める調味料を重ねています。具材を盛り込んでいても、主役はあくまで肉。火入れも的確で、たっぷりのフレンチフライとともに十分な満足感がありました。
AUSフィレは、断面の均一なロゼ色からも火入れの正確さが伝わります。肉質はやわらかく、香りもすっきり。濃いめのジュは別添えのため、肉そのものを味わいながら量を調整できます。サイドディッシュは、きめの細かなマッシュポテトと、わずかに歯応えを残したアスパラガスのソテー。アスパラガスの青い香りとバターの風味が、肉の余韻を重くしすぎません。
ブラックフォレストケーキは、クラシックな組み合わせをすっきりと仕立てたデザートです。チョコレートスポンジと軽いムースを層にし、赤いベリーの酸味で甘さに切れ味を持たせています。薄いチョコレート片の小気味よい食感も加わり、濃厚ながら単調さはありません。
アップルクランブルは、もう少し素朴で温かな味わいです。しっとりとしたリンゴのケーキに香ばしいクランブルを重ね、やわらかさと歯触りに変化をつけています。クリーミーなソースを添えた、飾りすぎないデザートでした。
総評
「ザ・ステーキハウス」の良さは、選び抜いた肉と的確な火入れを、必要以上に構えず味わえるところにあります。備長炭グリルを望むオープンキッチンには活気があり、メニューもステーキ一辺倒ではなく、前菜からデザートまで選択肢が豊富です。アメリカンステーキハウスらしい力強さを残しつつ、盛り付けや味の組み立てには現代的な軽さがある。ANAインターコンチネンタルホテル東京で、肩肘張らずに充実したディナーを囲みたいとき、覚えておきたい一軒です。
連絡先
The Steakhouse