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東京・南青山のmærge(マージ)で味わう現代フランス料理

Florence Consul
Florence Consul ·
Restaurants Michelin

2025年、東京・南青山に開業したmærge(マージ)。柴田秀之シェフが培ってきたフランス料理の技を軸に、日本各地の素材を現代の感覚で仕立てるレストランです。開業からわずか3カ月で『ミシュランガイド東京2026』の一つ星を獲得。出汁や山菜、発酵茶を取り入れながらも、ソースや火入れにはフランス料理の確かな骨格が通っています。

日本の素材を支える、フランス料理の技

店名のmærgeは、フランス語で「余白」を表す「marge」と、英語の「merge(融合する)」を重ねた造語です。熟成させた鹿肉や古代米など、日本各地の食材を取り入れ、フランス料理の古典的な技法を生かしながら、重さを残さない一皿へと仕立てています。

@mærge
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空間の着想源は、中国に由来する五行思想です。天然素材に異なる質感や不規則な造形を重ね、曲面の壁と円卓が同席者の距離を自然に近づけます。家具を手がけたのは、家具工房KOMAの松岡茂樹氏。整えすぎずに残した「完結しない美」と木のぬくもりが、料理と向き合いやすい柔らかな空気をつくっています。

@mærge
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柴田秀之シェフ、南青山までの歩み

北海道・留辺蘂出身の柴田秀之シェフは、1999年にレストラン モナリザ 恵比寿店で修業を始めました。その後フランスへ渡り、ブルゴーニュやパリで研鑽。帰国後、2009年にレストラン モナリザ 丸の内店の料理長となり、2016年には白金でレストラン ラ クレリエールを開業しました。同店はミシュラン一つ星を獲得し、2021年には『ゴ・エ・ミヨ』の「明日のグランシェフ賞」を受賞しています。

@mærge
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柴田シェフは2024年にレストラン ラ クレリエールを閉じ、日本各地の生産者を訪ねました。新しい店に向けて探したのは、過度に手を加えなくても持ち味が伝わる素材です。翌2025年に南青山でmærgeを開業。志を共有するチームとともに、料理、サービス、空間を一つの流れとして組み立てています。

この夜のディナーコース

アミューズは、野の景色を思わせるプレートに四品。炭をまとわせたジャガイモとタラのクロケッタは、香ばしい衣の奥に魚の風味が残ります。ブーダン・ノワールのプディングは濃厚でなめらか。小さなチキンサンドを挟み、最後はタラバガニと竹のスープへと続きます。合わせたシャンパーニュ ラルマンディエ‐ベルニエの「ラティテュード ブラン・ド・ブラン」は泡がきめ細かく、花を思わせる香り。味の濃淡が異なる四品にも無理なく寄り添いました。

「Square Butter」は、田中製粉の有機小麦粉と国産バターを使ったクロワッサン生地を、正方形に焼き上げた一品です。温かいうちに供され、薄い層がほどける食感とバターの香りが際立ちます。トッピングはキャビア、リコッタ、ハム、玉ねぎ、鴨のムース、薄く削ったコンテから好みのものを選択。簡潔な料理だからこそ、生地と焼き上がりの精度がよくわかります。

「冬の海/初摘み海苔」は、海藻と昆布を使った温かな出汁から始まります。その後に続く海藻のジュレには、歯触りを残したリンゴ、柔らかなイカ、ウドの青い香りが重なります。私はシャブリ・グラン・クリュを合わせました。夫のノンアルコールペアリングは、緑茶、炒り米、昆布出汁、塩を組み合わせた穏やかな一杯で始まります。

「Risotto SENSO」に使われているのは岡山県産の米。粒の食感を残したリゾットに、ほろ苦く青い香りの蕗の薹のムースと柔らかな鮑を合わせています。シャンパーニュとバターのソースにはコクがありながら、後口は重くありません。夫には茶とサフランを移したフレッシュなリンゴジュース、私にはブルゴーニュの辛口シャブリ。ミネラル感のある白が、鮑のうま味と蕗の薹の余韻を引き締めます。

続いて、天草産のふぐに白子と黒トリュフを合わせた一皿。ふぐは唐揚げ仕立てで、軽い衣と、とろりとした白子の対比が明快です。スペイン産トリュフを香らせたジャガイモのソースとニョッキが、味に深みを添えます。ノンアルコールペアリングは「biwa」と「yamatofushiyama」という2種の茶を使った、果実味と酸味のある一杯。私はシャトー シモーヌを合わせました。ふぐの淡い味を覆わず、トリュフの香りにもよくなじみます。

「Japanese Lobster Iveress」は、素麺と海老を組み合わせた料理です。海老は白ワイン、シェリー酒、日本酒を使ったソースでマリネし、甲殻類のうま味を凝縮した出汁に浮かべています。発酵茶のコンブチャ、みりん、きび糖のシロップを合わせたノンアルコールドリンクは、複雑さの中に丸みのある甘さがありました。私が選んだPoley Amontillado en Rama Selección 35 Añosは、長期熟成の香りが濃い海老の出汁に負けず、余韻をさらに長くします。

鰆には香りのよいキノコ、フォアグラ、レンズ豆を添え、若葉の上に盛り付けています。魚の脂にフォアグラのコクと豆の素朴な風味が重なりますが、後味は意外なほど軽やかです。ノンアルコールの一杯は、烏龍茶とコンブチャにコーヒー豆の香りを移したもの。私が合わせたヴォーヌ・ロマネ 1er cru レ・スショ 2013 デュポン・ティスランドは、赤い果実とスパイスのニュアンスが鰆やキノコによくなじみました。

口直しは、金柑、柚子のジュレ、フレッシュチーズのグラニテ。細かな氷と乳製品のまろやかさに、柑橘の酸味がくっきりと輪郭をつけます。大和橘のコンブチャを使ったドリンクにも、発酵由来の柔らかな甘酸っぱさがあり、次の肉料理を迎える前に口の中がすっきりと整いました。

この日の肉料理は、時間をかけて熟成させた北海道産の鹿肉です。力強いポワヴラードソースが肉の風味を受け止め、カラマンシーバターを添えた香ばしいカンパーニュが柑橘の明るさを加えます。季節の野菜は、皿に色を添えるだけでなく、食感にも変化をつけていました。夫にはチェリーのコンブチャ、4種のベリー、ビーツを合わせた甘酸っぱいドリンク。私にはシャトー・マルゴーが提案され、鹿肉の細かな風味まできれいに拾います。ナイフは、京都で日本刀と同じ素材から鍛えられたものの中から、好みの一本を選べます。柄を手がけたのは新潟のスワオメッキ有限会社。料理を取り巻く日本の手仕事にも目が向く趣向でした。

最初のデザートの主役は、世界最大級の柑橘とされる熊本県産の晩白柚です。レモンと晩白柚、二つのムースに瑞々しい果肉を添え、ピスタチオのアイスクリームと薄いメレンゲを重ねています。ラングプールライムの香りが甘さを抑え、柑橘らしいほろ苦さまで残す仕立てです。

二つ目のデザートは、黒豆を180℃で12分間火入れし、柔らかな食感と深い風味を引き出したもの。同じ温度で加熱したマダガスカル産バニラのさやから、甘く深い香りが広がります。ティラミスを思わせる冷たくクリーミーなパーツを添え、温度差と口溶けを楽しむ一皿です。

ミニャルディーズは、表面を香ばしく焼いたカヌレとチョコレートビスキュイ。きめ細かく点てた抹茶が添えられます。抹茶のほろ苦さが菓子の甘さを受け止め、フランス菓子と日本茶の組み合わせを最後まで自然に味わえました。

実際に訪れて感じたこと

mærgeで印象に残ったのは、日本の食材とフランス料理の技法を、目新しさのためだけに組み合わせていない点です。どの皿にも古典の骨格があり、出汁、山菜、発酵茶は必要な場所に無理なく収まっています。曲面や天然素材を生かした空間も料理を過剰に飾らず、食事に集中できる距離感を保っていました。何を古典から受け継ぎ、どこに新しさを加えるのか。その判断が一皿ごとに見えるレストランです。

連絡先

mærge

3-8-14 Minamiaoyama, Minato-ku, Tokyo, 107-0062, Japan
mærge
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