東京ステーションホテルの歴史と、「ブラン ルージュ」のフランス料理
歴史ある東京駅丸の内駅舎に入る東京ステーションホテルは、建築とともに食にも定評がある。メインダイニングは「ブラン ルージュ」。総料理長の石原雅弘が、日本各地の食材をフランス料理の技法で組み立て、端正な皿に仕上げている。
丸の内駅舎と歩んだ百余年
東京ステーションホテルは、1915年の開業から百年を超える歴史を刻んできた。高層ビルが並ぶ丸の内にあって、赤煉瓦の外観はひときわ目を引く。保存・復原を経た館内には現代の快適さが整う一方、高いヴォールト天井やシャンデリア、ヨーロピアンクラシックを基調とした意匠に、開業当時の面影が残る。
館内にはゆとりある客室に加え、装飾を抑えた現代的なスパもある。カジュアルな店から本格的なダイニングまで、バーやレストランの選択肢も多い。なかでも、腰を据えて料理と向き合うなら「ブラン ルージュ」だ。
窓の向こうに列車が行き交う白いダイニング
東京ステーションホテルの再開業と同じ2012年に誕生した「ブラン ルージュ」。白を基調とした明るい店内には半円形の大きな窓が並び、席によっては東京駅を発着する列車が見える。穏やかな室内と、絶えず動き続ける駅の風景。その対比が、この店らしい眺めをつくっている。個室は3室あり、接待や家族の祝い事など、周囲に気兼ねなく食事をしたい場面にも使いやすい。
石原雅弘、日仏で培った料理
総料理長の石原雅弘は、ホテルエドモント(現・ホテルメトロポリタン エドモント)で、日本を代表するグランシェフの中村勝宏に師事した。同ホテルのフレンチレストランで料理長を務め、2007年に渡仏。ミシュランの星を持つレストランで研鑽を積んだ。2011年には東京ステーションホテルの総料理長に着任し、館内レストランの料理コンセプトからメニューまでを統括。各地の生産者を訪ねて日本ならではの食材を探し、フランス料理の伝統を現代の東京に合う形へ組み直している。
ランチコース「ムニュ デギュスタシオン デュ ミディ」
メニューは旬に合わせ、おおよそ2カ月ごとに替わる。ワインセラーには、国産を含む各国のワイン約1,200本を備えている。
私たちが選んだのは、ランチコース「ムニュ デギュスタシオン デュ ミディ」。小さなアミューズに始まり、最初の皿は蟹、鶏、野菜。異なる食感の合間に、それぞれの旨味が重なる。続く鮪と黒豚に野菜を合わせた皿は、意外な取り合わせながら、後味は軽かった。
焼き目を香ばしくつけたカジキには、イベリコ豚と旬の野菜が添えられる。それぞれの味が埋もれず、取り合わせの面白さが伝わる一皿だ。冷たいガスパチョは酸味が心地よく、ここで口の中がすっと整った。メインに私が選んだ本日の鮮魚は、やわらかな身を保つ火入れがよかった。夫は土佐鴨を選び、やわらかな肉質と深い旨味を楽しんでいた。
プレデセールには無花果。次の甘味へ自然に移る一皿だった。デザートは葡萄を主役に、マスカルポーネのまろやかさと、軽い口当たりのクリームチーズを重ねている。甘さは控えめで、最後まで重くならない。紅茶とプティフールをいただきながら、ゆっくりと余韻をたどった。
食後に感じたこと
東京ステーションホテルでは、丸の内駅舎が重ねた時間と、現代のホテルらしい快適さが無理なく同居している。「ブラン ルージュ」の料理も、フランス料理の技法を土台にしながら、日本の食材を率直に見せるものだった。東京の中心で、駅舎の歴史ごと食事を楽しみたい日に選びたい一軒だ。
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Blanc Rouge