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Jean-Georges at The Shinmonzen、祇園の静けさに寄り添うファインダイニング

Florence Consul
Florence Consul ·
Restaurants 京都 Michelin

賑わいから一歩離れた路地、黒い木の外壁、川面に揺れる光。カウンター越しには、料理人の無駄のない手元が見えます。声高に主張せずとも、佇まいから確かな仕事が伝わる場所が京都にはあります。祇園のThe Shinmonzenも、そのひとつ。職人の手仕事と現代美術、自然体のもてなしが息づく小さなホテルです。その一角にあるJean-Georges at The Shinmonzenでは、ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステンの料理哲学を軸に、フランス料理の技法、アジアの香り、京都の旬が一皿の中で交わります。

祇園の路地に佇むThe Shinmonzen

The Shinmonzenが立つのは、ギャラリーや古美術商、工房が軒を連ね、「美術の通り」とも呼ばれる祇園の新門前通。石畳の路地や茶屋、寺院に近く、それでいて観光地の喧騒とはほどよい距離があります。建物に沿って流れる白川は季節ごとに景色を変え、とりわけ岸辺に桜が咲く春は美しい。町家を思わせる外観は周囲の街並みに馴染み、祇園を歩いて帰ってくると、静けさが戻ってきます。私たちが実際に滞在した際の様子は、こちらの記事で詳しく紹介しています:The Shinmonzen:京都の美術と文化に触れる滞在

@Jean-Georges at The Shinmonzen
@Jean-Georges at The Shinmonzen

素材と料理人の所作が映える空間

ステファニー・ゴトウが手がけた店内は、木の温もりと障子の軽やかさに、オープンキッチンを囲む深緑の大理石がくっきりとした輪郭を与えています。料理人の手元を間近に見られるカウンター、ゆとりを持たせたテーブル、個室があり、客席数は抑えられています。ムラーノ・ガラスの照明、季節の花、京都で特注した器も、飾り立てるのではなく、それぞれの素材感を静かに伝えるもの。土地の手仕事と現代的な感覚が交わり、調理する姿も食事の風景に溶け込んでいます。

@Jean-Georges at The Shinmonzen
@Jean-Georges at The Shinmonzen
@Jean-Georges at The Shinmonzen
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アルザスから京都へ、ジャン-ジョルジュの歩み

世界で約60軒のレストランを率いるジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステンは、アルザス出身。ポール・エーベルランのもとで修業を始め、その後はポール・ボキューズやルイ・ウーティエらと仕事を重ねました。さらにバンコク、シンガポール、香港で経験を積んだことが、現在の料理にも色濃く表れています。重いフォンやクリームに頼らず、野菜のジュースや果実のエッセンス、軽いブイヨン、ハーブのヴィネグレットで香りと奥行きを引き出す。その考え方は京都でも変わらず、アジアの風味をさりげなく取り入れた現代的な料理へつながっています。

@Jean-Georges at The Shinmonzen
@Jean-Georges at The Shinmonzen

京都の厨房では、開業以来、女性シェフがその考え方を受け継いできました。2023年3月の開業時にエグゼクティブシェフを務めたハナ・ユンは、地元の市場や生産者から旬の食材を選び、ニューヨークのジャン-ジョルジュとともにメニューを作り上げました。2022年にシェフ・ド・パルティとして加わり、開業準備にも携わった原田梨世奈は、副料理長を経て2026年7月にシェフ・ド・キュイジーヌへ就任。現在は厨房を率い、店の味と精度を支えています。

京都の旬を取り込む、境界のない料理

フランス料理を土台に、アメリカとアジアで培った感覚を自在に取り込むのが、ジャン-ジョルジュの料理です。ハーブやスパイス、柑橘の酸味を生かした皿は味の輪郭が明快で、後口に重さを残しません。メニューは京都の細やかな季節の移ろいに合わせて変わり、京野菜や土地の豆腐をはじめ、日頃から付き合いのある農家、漁師、職人から届く食材が使われています。

@Jean-Georges at The Shinmonzen
@Jean-Georges at The Shinmonzen
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朝食からディナーまで利用でき、季節のテイスティングメニューのほか、The Shinmonzenのために考案したアラカルトも用意されています。ワインセラーには3,000本以上を収蔵。世界各地の銘柄に加え、ホテル経営者でコレクターでもあるパディ・マッキレンが手がける、プロヴァンスのChateau La Costeのワインも並びます。The Shinmonzen、Chateau La Coste、Jean-Georgesのソムリエが組み立てたリストからは、京都とプロヴァンス、二つの土地とのつながりが見えてきます。日本茶のセレクションや、京都%Arabicaによるホテル限定ブレンドのコーヒーも揃っています。

一つ星のディナー、その一皿ずつ

この日のディナーには、店の持ち味を順にたどれるテイスティングメニューを選びました。味の強弱と温度に変化をつけた、細部までよく練られたコースです。最初の一杯は、Chateau La Costeの「La Bulle」。軽やかな泡で口を整え、食事が始まります。

最初に供されたのは、三つの小さなアミューズです。雲丹とブラウンブレッドには柚子とセラーノチリを合わせ、磯の甘みを柑橘の香りと辛味で引き締めています。生姜のマリネと辛味大根を添えた鮪のリボンは、澄んだ香りの軽いひと口。鱒のクリスピー寿司では、香ばしい土台とチポトレマヨネーズの燻香が、脂ののった身と鮮やかな対比を見せました。

続くのは、ジャン-ジョルジュを代表するエッグトースト。小さな白い台に、きつね色に焼いた二枚のトーストが整然と置かれています。中に挟まれているのは、濃厚な卵黄のコンフィとディル、チャイブ。上にはフランス産キャビアが惜しみなくのります。薄いトーストの歯ざわり、ほどける卵黄、粒ごとに塩味が弾けるキャビア。余計な演出を加えず、三つの味と食感を明快に重ねた一品です。

真鯛の刺身は、乳白色の切り身を花びらのように重ね、マスカットのジュレと透き通った葡萄を添えた一皿。鮮やかな緑色のハーブ入りバターミルクソースが、酸味とまろやかさを補います。ペアリングの「田酒 愛山」は、穏やかな甘みとなめらかな口当たり。葡萄の果実味から魚の塩味、ハーブの余韻までを無理なくつないでいました。

エアルームトマトの皿には、赤、緑、琥珀色の地元産有機トマトが円を描くように盛られています。シャンパーニュヴィネグレットの明るい酸味に、夏野菜と胡瓜の歯ざわりが重なる仕立てです。ハーブと食用花もごく控えめ。畑から届いたトマトそのものの味がよく分かる、涼やかな夏の前菜でした。

車海老のグリルは、土の質感を残した陶器で供されます。香ばしく焼いた海老を若芽やシダの新芽が覆い、その下にはなめらかなシードヨーグルト。琥珀色のソースがコクを補い、橙と紫の食用花が皿に色を添えます。海老の甘みと潮の風味に、若芽の青さ、種の軽い歯ざわり、ヨーグルトの酸味が重なり、春の野山を思わせる一皿でした。

肉料理は、京都丹波和牛のフィレ。きめ細かな脂を含むやわらかな肉に、胡椒のクラストが香りと食感を加えています。ほのかに甘いヤングコーンが濃厚さを和らげ、味噌マスタードのエマルションは酸味と旨味の橋渡しに。合わせた2023年のマルサネは、赤い果実の香りとみずみずしい酸、端正な骨格を備え、和牛の脂を受け止めつつ胡椒の余韻を長く残しました。

デザート前の冷菓は、黄金色の柑橘グラニテを淡い緑色のアスパラガスのフォームで覆ったもの。口にすると、まず冷たさと鮮烈な酸味が広がり、紫蘇の小さな紫の葉から青い香りが立ちます。野菜と柑橘の意外な組み合わせながら、後味はすっきり。切れのよい口直しです。

デザートの主役は葡萄とピスタチオ。クリーム色の大皿の中央に淡いメレンゲの円筒を置き、赤いクーリを点描のように配しています。軽いメレンゲの中には、酸味の鮮やかな葡萄のソルベとピスタチオのフィナンシェ。薄く切った葡萄は、透ける花びらのように重なります。果実の清涼感に焼き菓子のバターのコクが続き、ピスタチオの青い風味が余韻に残りました。

最後のプティフールは三品。薄く砂糖をまとった赤いチェリーのパート・ド・フリュイ、口溶けのよいダークチョコレート、小さな三角形の黄金色のショートブレッドです。果実の酸味、カカオの深み、バターの香りと軽い歯ざわりが順に続きます。照明を落としたダイニングで、お茶とともにゆっくり味わうのにちょうどよい量でした。

総評

Jean-Georges at The Shinmonzenで心に残ったのは、祇園の静けさ、木や石の手触り、正確でありながら構えすぎないサービス、輪郭の明快な料理が、無理なくひと続きになっていたことです。京都の季節、フランス料理の技法、多文化的なアクセントのいずれかが前に出すぎることもありません。ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステンの考え方を受け継ぎ、原田梨世奈が厨房を率いる現在も、この店の料理には京都という土地がはっきり表れています。落ち着いた空間で、土地に根ざした現代の料理と向き合いたい旅行者に薦めたい一軒です。

連絡先

Jean-Georges at The Shinmonzen

1F, The Shinmonzen, 235 Nishinocho, Higashiyama-ku, Kyoto, 605-0088, Japan
Jean-Georges at The Shinmonzen
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