バンヤンツリー・東山 京都で過ごす、旅館の趣とホテルの快適さ
京都・東山の高台にあるバンヤンツリー・東山 京都。私たちが宿泊して心に残ったのは、観光から戻るたびにほっとできる居心地のよさでした。穏やかで行き届いたもてなしに、ホテルで過ごす時間も自然と長くなります。
東山を歩き、緑に囲まれた高台へ
2024年に開業したホテルは、竹林や大きく育った桜の木に囲まれた東山の斜面にあります。清水寺や八坂の塔、昔ながらの町並みが残る二寧坂、祇園へは徒歩数分。名所を巡るのに便利な場所ですが、人通りの多い道から少し離れているため、館内では街の賑わいが遠く感じられます。人が増える前の早朝に近隣の寺社を訪ね、散策を終えたらホテルへ戻る。そんな過ごし方がよく似合います。
隈研吾の建築と京都の手仕事
隈研吾が手がけた建築は、竹林や再生された庭園に馴染む、すっきりとした佇まい。日本の美意識である幽玄と、自然の中で日常を離れて過ごすという発想が、設計のもとになっています。現代的な建物でありながら、随所に京都の文化が息づいています。館内の木工品や編み細工、陶磁器、金工品、染織品にも、この土地で受け継がれてきた職人の技を見ることができます。
内装には木や石が使われ、御影石や濃色の粘板岩、なぐり加工による凹凸など、素材や仕上げの違いが目に留まります。自然な色合いで色数を抑えているぶん、手仕事の質感がよく伝わってきます。ロビーは3層分の高さがあり、格子の隙間から光が差し込む空間。大きな窓の向こうには庭園が広がります。到着時にはここで抹茶と和菓子をいただき、ひと息つきました。
庭園の中心で目を引くのが、竹林を背にした屋外の能舞台、Bamboo Pavilionです。水面に浮かぶような姿を、りょうぜんの客席やテラスから眺められます。京都のホテルで能舞台を備えているのはここだけ。上演のないときも庭園の風景に溶け込み、公演時には日本の伝統芸能に触れられる場所になります。
畳と障子、金箔をあしらった客室
全52室の客室をデザインしたのは、故橋本夕紀夫。畳の床や障子の間仕切りに天然木、石、紙を取り合わせた室内には、旅館の趣があります。端正な家具に控えめな金箔のあしらい、日本の美術作品。明るく自然な色合いで統一され、肩の力を抜いて過ごせる雰囲気です。大きな窓のそばには掘りごたつ式の席があり、本を読んだり、お茶を飲んだりするのにちょうどよい場所。庭園や京都の瓦屋根、塔、遠くの山々を眺めていると、そのまましばらく腰を落ち着けたくなります。
私たちが滞在したのは、広さ48〜55㎡のグランドセレニティ・キング。綿100%のベッドリネンを使ったキングサイズのベッドは寝心地がよく、大きく奥行きのあるソファでもゆったりくつろげました。家具の配置にも無理がなく、部屋の広さを心地よく感じられます。とりわけ気に入ったのは、障子で仕切れる浴室。深いヒバの浴槽に湯を張ると、ほのかな木の香りが立ち上ります。チェックイン時に選んだ香り袋を使って、入浴中の香りを楽しむこともできました。客室で天然温泉に浸かりたいなら、ONSENリトリートも選択肢に。ホテルの地下から湧く40℃の天然温泉を引いた専用の風呂があり、人目を気にせず入浴できます。
和食、ウェルネス、洋食から選ぶ朝食
朝食は和食、軽めのウェルネスメニュー、洋食から選べます。和朝食には、鰆の西京味噌焼き、刺身の盛り合わせ、京都産豚肉と白菜の煮物、季節の料理、丹波地鶏の茶碗蒸しが並びます。日南のコシヒカリを炊いたご飯またはお粥に、京都山利の味噌汁、漬物、季節の果物も。軽く済ませたい朝には、西京味噌ドレッシングのサラダにグラノーラ、ヨーグルト、ベリー、チーズ、果物を組み合わせたウェルネス朝食が向いています。洋食の卵料理はスクランブルエッグ、オムレツ、目玉焼きの3種類。ベーコン、ソーセージ、ポテトケーキ、きのこ、豆のトマト煮、ブロッコリーのソテー、小さなグリーンサラダが添えられます。パンもクロワッサンからこんがり焼いたトーストまで揃っています。
りょうぜんでいただく季節の会席
能舞台の隣にある割烹料理のりょうぜんでは、朝食と夕食をいただけます。客席から見えるのは、水盤と舞台、その奥に広がる竹林。料理には京野菜をはじめ、地元の味噌や黒七味が使われ、季節の食材や生産者を大切にしていることが伝わってきます。手描きの絵付けを施した陶器も、料理とともに目を楽しませてくれました。
私たちがいただいたのは、全8品の風姿会席。季節の食材を少量ずつ仕立て、盛り付けにも細やかな気配りがありました。ひと皿ずつ、素材の味を確かめながらいただきます。ほかに、京都の味を軸にした全7品の花伝会席や、料理人が目の前で焼き上げる様子を見ながら食事ができるカウンターでの夕食もあります。
前菜は、葉をあしらった濃色の盆に、小さな器と色とりどりの料理を並べたもの。茄子の煮浸しの醍醐あんかけ、焼き鰻、胡麻豆腐、きゅうりに、山桃、生ハムといちじく、さつまいもの蜜煮が続きます。蝦夷鮑、厚焼き玉子、鴨のロースト、辛子明太子と蓮根、ごぼうの巻き物、こんにゃくの醤油煮もあり、庭を眺めながら少しずつ箸を進めました。合わせた神蔵のスパークリング日本酒は泡が細かく、品数の多い前菜にもよく合いました。
続く椀は、5年熟成の利尻昆布に鰹節と鮪節を合わせた、澄んだだしが味の要。穴子の団子、そうめん、かぼちゃに、柚子の香りと梅肉の酸味が効いています。一緒にいただいたのは、ほうじ茶のスパークリング飲料Roasted Green Sparkling。背の高い脚付きグラスに注がれた琥珀色もきれいでした。
お造りは3種。真珠のような白さ、深い赤、透けるような身が一皿に並びます。切り付けは端正で、しその葉や香草、わさび、大根、小さな花を控えめに添えた盛り付け。箸を伸ばす前に、魚の色や身の質感をしばらく眺めていました。
焼き物は、備長炭で焼き上げた黒毛和牛のフィレ。表面には薄く焼き色が付き、薔薇色の切り口には細かく入った脂と肉汁が見えます。炭火の香りをまとった肉に、やわらかなかぼちゃ、ヤングコーン、赤と黄のパプリカの焼き野菜が添えられていました。野菜の甘みとほのかな焦げた香りが、牛肉によく合います。黒七味塩、わさび、あけがらしを少しずつ添え、ひと口ごとに味を変えながらいただきました。
次の温物は、きくらげを合わせた小さな蓮根饅頭の蟹あんかけ。牛肉をいただいたあと、温かさと食感をゆっくり確かめながら味わいました。蟹の穏やかな甘みの中に、わさびの辛みが効いています。合わせたビールBeniharuki Black Sparklingは琥珀色で、表面にはきめ細かな泡が薄く広がっていました。
天ぷらは海老と3種の野菜。淡い色の衣には細かな気泡があり、さくりと軽い歯触りです。中はみずみずしく、海老には甘みが、野菜にはそれぞれのやわらかさやほのかな苦みがありました。添えられたきめの細かい京都の塩で、素材の味を楽しみます。
食事の締めには、とうもろこし、枝豆、煮込んだ牛肉を散らしたご飯が運ばれてきました。艶のある米に、枝豆の歯触りとやわらかな牛肉のコク。湯気の立つ味噌汁と自家製の漬物が添えられ、ほっとする献立でした。合間に漬物をいただくと、その酸味で口の中がさっぱりします。
最後は桃のコンポートと紅茶のアイスクリーム。やわらかく煮た桃に、淡いベージュ色のなめらかなアイスクリームが盛られています。琥珀色のシロップは小さなピッチャーに入って添えられ、好みの甘さに調整できました。盛り付けは控えめで、食後にも食べやすい爽やかな味わいです。
BAR RYOZENで地酒を飲み比べる
レストランの下にあるBAR RYOZENは、照明を落とした20席の小さなバー。伏見の酒をはじめ、地酒や高級銘柄の日本酒を30種以上揃え、希少な銘柄もテイスティングセットで飲み比べられます。カクテルにはRYOZEN抹茶ジントニックやMirinブリーズ、純米大吟醸に青々とした香りを合わせたKyoto martiniがあり、希少なジャパニーズウイスキーも。日本酒を90分間自由に楽しめるプランには、たまり醤油を使ったスモークサーモンの寿司、豆腐と帆立の揚げ物、ローストビーフのサラダなど、シェフが手がける料理が付きます。食前の一杯にも、腰を落ち着けて飲み比べたいときにも使いやすく、サービスも丁寧でした。
天然温泉とタイ式・バリ式マッサージ
バンヤンツリー・スパ 東山 京都では、日本で親しまれてきた養生の習慣と、ブランドが得意とするタイ式、バリ式のマッサージを組み合わせています。トリートメントには地元産を含む新鮮な天然素材を使用。ウェルビーイングの8つの柱をもとに、心と体の両面から健康を考えています。専用のヒノキ風呂とスチームサウナがある温泉スイートは、周囲を気にせず過ごせる空間。代表的なメニューの温泉インダルジェンスでは、60分の入浴に続いて60分のマッサージを受けられます。敷地内の源泉から湯を引く男女別の大浴場には、内湯と露天風呂を備えています。ジムや、竹林のそばで行われる朝のヨガもあり、体調や気分に合わせて過ごせます。
滞在を振り返って
寺院や古い町並みを巡るだけでなく、食事や入浴にも時間をかけたい人に向いているホテルです。私たちにとっても、館内で過ごす時間は観光と同じくらい満足のいくものでした。予定を詰め込みすぎず、ホテルに戻ってからの数時間を空けておくと、この宿のよさをより感じられると思います。
印象に残った点
- グランドセレニティ・キングの居心地。旅館の趣がありながら、現代のホテルに求める快適さも備わっていました。
- りょうぜんの朝食と夕食。どちらも満足できる内容でした。
- ロビーや能舞台のある庭園など、京都らしさとホテル独自の個性が感じられるデザイン。
気になった点
- 主な観光名所には近いものの、ホテルへ歩いて戻る際の上り坂は、特に夏の暑い時期にはかなり負担に感じられます。
宿泊料金
- グランドセレニティ・キングの料金は、2026年7月で1,000ユーロでした。
連絡先
空室を確認Banyan Tree Higashiyama Kyoto