富士スピードウェイホテル、富士山とサーキットを望む滞在
静岡県小山町にある富士スピードウェイホテルでは、サーキットの熱気と富士山麓の穏やかな景色が隣り合います。「アンバウンド コレクション by Hyatt」に属し、館内には日本の自動車文化を伝える意匠が随所に。富士山を望む客室をはじめ、温泉や静岡の食材を生かした料理も揃い、車を目当てに訪れる人だけでなく、ホテルでゆっくり過ごしたい人にも選ぶ理由のある一軒です。
富士山とサーキットの間に立つホテル
ホテルが立つのは、静岡県駿東郡小山町。御殿場駅と駿河小山駅からはいずれも約10km、東京から車でおよそ80分です。三島スカイウォークや富士五湖、富士山を望む御殿場プレミアム・アウトレットも周遊先に加えられます。サーキットでの予定に、山麓の自然や買い物を組み合わせやすい立地です。
トヨタグループが所有する富士スピードウェイに隣接し、客室をはじめ館内の各所から富士山を望めることが、このホテルならではの特徴です。富士スピードウェイはF1日本グランプリが行われた歴史を持ち、1967年に始まった耐久レースの系譜は、現在の富士6時間耐久レースへ受け継がれています。モータースポーツが旅の目的でなくても、静岡東部を巡る拠点として使いやすい場所です。
自動車文化を映した館内
エントランスを入ると、一般的なリゾートホテルとは明らかに趣が異なります。サーキットを思わせるロゴ、磨かれたエンジンや自動車部品、往年のレースポスターが、現代的な内装の中に端正に収められています。展示は数を見せつけるような置き方ではなく、館内を歩くうちに日本のモータースポーツ史が少しずつ見えてくる趣向。熱心なファンでなくても、車を軸にした空間づくりの面白さを感じられるでしょう。
窓いっぱいに広がる富士山
全120室のうち、スイートは21室、ヴィラは5室。客室は、走行する車を眺められるサーキットビューと、富士山に正対するマウンテンビューに大きく分かれます。専用ガレージを備えたヴィラは居住空間にもゆとりがあり、プライベート感を重視する人や、愛車と旅する人に向いた造りです。愛犬と宿泊できるタイプもあります。
私たちが滞在したのは、約55m²の「デラックス 富士山ビュー キング1台」。キングベッドを中心にした室内には床から天井までの窓があり、専用バルコニーの先に富士山がすっきりと立ち上がります。視界を遮る建物や住宅はほとんどなく、朝、カーテンを開けた瞬間の眺めは忘れがたいものでした。大理石を使ったバスルームには深めのバスタブとレインシャワーを備え、一日の終わりにゆっくり湯に浸かれます。
富士山を正面に迎える朝食
朝食は、富士山を正面に望むダイニングで、和洋の料理をビュッフェ形式でいただきます。注文に応じて仕上げる卵料理のほか、キャラメリゼしたバナナのパンケーキ、アボカドスマッシュトースト、地元の魚介を使った品など、選択肢は十分。なかでも試したいのが、1596年創業の老舗「丁子屋」に伝わるとろろ汁です。眺めだけでなく、朝から土地の味に触れられる内容でした。
TROFEO イタリアンで味わう静岡
オープンキッチンと屋外テラスを備えた「TROFEO イタリアン」は、静岡の食材を使ったトラットリアスタイルのレストランです。TROFEOはイタリア語で「トロフィー」を意味し、店名にもモータースポーツとのつながりが表れています。大きな窓の向こうには富士山。昼から夕刻へと光が変わるにつれ、山の見え方も少しずつ移ろいます。
料理には、富士山麓で育った食材が随所に使われています。朝霧高原産の牛乳で作るモッツァレラ、果肉が緻密なアメーラトマト、フジアトランティックサーモンなど、持ち味のはっきりした素材が印象に残りました。
夕食は、パプリカマヨネーズとレモンを添えたタコのフリットから始めました。薄い衣の歯触りが軽く、レモンの酸味もよく合います。七富チーズ工房のモッツァレラ、アメーラトマト、静岡県産オリーブオイルを合わせたカプレーゼは、素材に余計な手を加えない一皿。牛頬肉の煮込みラグーを絡めたフェットチーネには、マスカルポーネの穏やかな甘みが重なります。ロブスターのリングイネは、ニンニクとルッコラを利かせたフレッシュトマトのクリームソース仕立て。メインには、なめらかなトマトソースをまとったイタリア風ミートボール「ポルペッテ」を選びました。デザートは静岡緑茶のティラミスと、黒胡麻クリームを添えたほうれん草のロール。静岡の風味をドルチェに取り込む発想にも、この店らしさが表れていました。
Robata OYAMA、炭火で味わう静岡
「Robata OYAMA」は、昔ながらの炉端焼きに現代的な感覚を取り入れたレストランです。静岡の肉や魚介、旬の野菜を炭火で焼き、地酒や丸七製茶のお茶と合わせます。料理長は、静岡県出身の寿司職人、泉地浩二氏。食材を見極めた火入れと、静岡の産地を意識した献立が軸になっています。
OMIKAコースと静岡茶のペアリング
私たちは「OMIKA」コースに、ティーテイスティングを組み合わせました。合わせたのは煎茶、ほうじ茶、玄米茶の3種。濃い黄金色から淡い琥珀色まで見た目にも違いがあり、料理の香ばしさや脂の余韻に応じて選ばれています。酒とは異なる角度から一皿の味を引き出す、興味深いペアリングでした。
最初は、醤油だれに漬け、表面を軽く炙ったフジアトランティックサーモン。脂ののった身に細切りの野菜を重ねることで、みずみずしさと歯触りが加わります。食べ応えはありながら、口に重さを残さない始まりでした。
続く「MORIZO サラダ」は、季節の野菜に香ばしく焼いた鰻と魚を盛り合わせた一皿です。とろろが素材をなめらかにつなぎ、りんごのヴィネグレットが軽い酸味と果実味を添えます。野菜の歯触りに炭火の香り、魚介の旨味が重なり、一口ごとに表情が変わりました。
じっくり煮た牛頬肉の筋は、箸を入れるだけでほどける柔らかさ。煮汁を含んだ大根のほのかな甘みに和辛子の刺激が重なり、濃い味わいをきりりと締めています。
炭火で焼いた鰤には、味付けした半熟卵が添えられています。炭の香りをまとった身に黄身が絡み、鰹節の旨味と塩気も重なります。仕上げの香草が、鰤の豊かな脂を軽く受け止めていました。
和牛のグリルと季節野菜は、肉の中心を淡いロゼ色に残した火入れです。きのこや根菜の土を思わせる香りと歯触りが、柔らかな肉と好対照。ソースと塩は控えめに添えられ、好みの加減で食べ進められました。
食事の締めは、中トロと旬魚を握った三貫の寿司。つやのある切り身と形の整った握りに、寿司職人として経験を重ねてきた料理長の仕事が見て取れます。
デザートは、さつまいもの温度と食感を変えた一皿。ほくりと焼いた芋に冷たいさつまいもアイスを重ね、薄いチップの軽い歯触りを添えています。甘い醤油だれの塩気と旨味が、芋の甘さをほどよく引き締めていました。
BAR 4563、V型8気筒エンジンと270台のミニカー
「BAR 4563」は、富士スピードウェイのメインコース全長4,563mにちなんで名付けられた、隠れ家のようなバーです。シグネチャーカクテルと国産ウイスキーを中心に揃え、内装にもレースの要素が散りばめられています。入口近くにはV型8気筒エンジン、中央にはF1カーを思わせるセンターテーブル。壁には270台のミニカーが、スターティンググリッドのように整列しています。プライベートラウンジにはレーシングシミュレーターもあり、屋外テラスでは夜風に当たりながらカクテルを飲めます。
シミュレーターから実車での走行まで
ホテルでは、車の挙動を細かく再現したレーシングシミュレーターから、管理されたコースで実車を操るドライビング体験まで、車にまつわるさまざまなプログラムを用意しています。モータースポーツの歴史や技術革新を紹介する展示もあり、運転せずにじっくり見学したい人にも見応えがあります。詳しくはこちらの記事で紹介しています:富士スピードウェイで体感する、モータースポーツの世界
Omika Wellness & Spaで体をほぐす
ホテルに隣接するウェルネス棟「Omika Wellness & Spa」は、所在地の大御神(おおみか)に由来する名称です。棟内には温泉浴場、スパ、屋内プール、フィットネスジムが揃います。私が受けた「OMIKA グリーンティーコンプレス」は、静岡県産の季節の緑茶と薬草をブレンドした温かな薬草ボールを全身に押し当て、茶の実オイルでマッサージするトリートメント。温もりとお茶の香りがゆっくり伝わり、施術後は肩や脚のこわばりが和らいだように感じました。
自家源泉の「富士大御神温泉」には大浴場と半露天風呂があり、湯に浸かりながら富士山を眺められます。大きな窓から自然光が入る屋内プールは全長20m。庭に面したフィットネスジムは24時間利用でき、テクノジムの有酸素運動用マシンやウェイトマシンを備えています。温泉、スイミング、トレーニングから、その日の予定や体調に合うものを選べます。
総評
館内に取り込まれたサーキットの高揚感と、窓の外に広がる富士山の静けさ。その鮮やかな対比が、富士スピードウェイホテルをほかにはない一軒にしています。客室からレストラン、温泉、スパまで敷地内で無理なく行き来でき、車を目的にした旅にも、ホテルで過ごすことを中心にした休日にもよくなじみます。
気に入った点:
- 自動車部品やレース資料をインテリアに取り込み、モータースポーツというテーマを細部まで一貫させていること。
- 客室だけでなく、ロビー、温泉、TROFEO イタリアンからも富士山を大きく望めること。
- 車好きに限らず、富士山の眺めやスパを楽しみたい人、子ども連れにも選択肢があること。愛犬と泊まれる客室も用意されています。
惜しかった点:
- 周辺は静かで、歩いて行ける飲食店は限られます。夕食はホテル内で取る前提で予定を組んでおくと安心です。
基本情報
- 「デラックス 富士山ビュー」は、2026年2月時点で1泊400ユーロから。