富士スピードウェイ、観るだけではないサーキットの楽しみ
富士山麓に広がる富士スピードウェイには、日本の自動車文化と半世紀を超えるレースの歴史が重なる。1966年の開業以来、国内外から多くのレースファンを迎えてきた。全長4,563メートルのコースでは、レース観戦だけでなく、実車での走行やシミュレーター、ミュージアムを通じてモータースポーツをさまざまな角度から知ることができる。
富士山を望む国際サーキット
国際自動車連盟(FIA)のサーキット規格で最高位の「グレード1」を取得した国際レーシングコース。長いストレートで速度を上げ、直後のTGRコーナー(第1コーナー)に向けて一気に減速するレイアウトが大きな特徴だ。晴れた日には、その先に富士山が姿を見せる。年間を通してSUPER GTや、FIA 世界耐久選手権(WEC)の富士6時間耐久レースなどが開かれ、開催日以外もドライバーの練習走行に使われている。トヨタ自動車が展開する富士モータースポーツフォレストの一角にあり、通常営業日には富士スピードウェイホテルの宿泊者も入場できる。レースや貸切走行がなければ、徒歩や自転車で場内を巡り、飲食・レジャー施設にも立ち寄れる。
シミュレーターでコースをつかむ
富士スピードウェイホテルには、タイプの異なるレーシングシミュレーターが2台ある。フィットネスジムに置かれた本格仕様の一台は、180度を覆う画面にレーシングシートとステアリングを組み合わせ、サスペンションの振動まで再現する。車種とトランスミッションを選ぶと、エンジン音や車体の動きが伝わり、コースの感覚をつかみやすい。もう一台はホテル内のBAR 4563にあり、「アセットコルサ」をプレイできる。映像を追いながらハンドルを握り、その後はカクテルやジャパニーズウイスキーをゆっくり飲む。実走前のイメージ作りにも、コースを走った後の振り返りにも使える。
Huracán Spyderでメインコースを3周
ホテルでは、実際のコースを走るドライビング体験も手配できる。選べる車両には、GRヤリス RZ“High performance”、GRカローラ RZ“MORIZO Edition”、ランボルギーニ Huracán Spyder(ウラカン・スパイダー)、NISSAN GT-R NISMOなどがある。キャラクターをあしらった痛車仕様のGR86(AT)を借り、3周するというユニークな選択肢も用意されている。私たちが選んだのはHuracán Spyder。富士山を背にコースへ出ると、アクセルへの反応の鋭さと車体の力強さがはっきり伝わった。参加車両がそろうと、追い越し禁止で先導車に続き3周する。周囲に無理に速度を合わせる必要はなく、自分のペースを保てるため、初めてのサーキットでも構えずに走れた。参加時には日本国内で有効な運転免許証が必要で、外国免許証を使う場合は所定の日本語翻訳文も求められる。
愛車で走りたい人は、自分の車を持ち込んで体験走行に参加できる。さらに本格的な走行技術を身につけたい場合は、講習を受けて「富士スピードウェイ ドライビングライセンス」を取得すれば、スポーツ走行へ進む道もある。
約130年のモータースポーツ史
ホテルの1、2階にある富士モータースポーツミュージアムには、各時代を代表する車両約40台が並ぶ。トヨタ自動車が国内外の自動車メーカー10社と連携して運営し、およそ130年にわたるモータースポーツの流れを時代順に追える展示となっている。19世紀末のフランスで蒸気・電気・ガソリン車が競った初期のレースから、現代のプロトタイプやグランプリ用シングルシーターまで、車両を見ていくだけでも動力と設計思想の変化が分かる。
展示の主役は名車だけではない。サーキットで磨かれた技術が量産車に応用され、自動車をどう変えてきたのかも丁寧に説明されている。世界各地のレースで活躍した車両に加え、日本初公開の車両もあり、レースが技術開発の場でもあったことがよく分かる。見学後は3階のショップとカフェへ。テラスからコースを眺めながら、ひと息つける。
サーキットの隣に泊まる
サーキットに隣接する富士スピードウェイホテルは、「アンバウンド コレクション by Hyatt」に属するホテル。館内には機械部品やレースポスター、日本の自動車史を伝える意匠が点在し、客室にもモータースポーツの要素がさりげなく取り入れられている。客室、スイート、ヴィラの窓の先に広がるのは、眼下のコースまたは富士山。TROFEO イタリアンでは静岡の食材を使ったイタリア料理を、Robata OYAMAでは炉端焼きを味わえる。BAR 4563の名はコース全長に由来する。温泉浴場やスパ、屋内プール、フィットネスジムを備えたOmika Wellness & Spaもあり、走行後にホテルへ戻れば、そのまま食事や温泉で体を休められる。ホテルについては、富士スピードウェイホテル:モータースポーツとホテルステイが交わる場所で詳しく紹介している。
訪れて分かったこと
富士スピードウェイでは、レースを観るだけでなく、シミュレーターでコースを覚え、自分で走り、その背景にある技術史までたどれる。私たちが実際に回って感じたのは、体験を重ねるほどサーキットの見え方が具体的になることだった。富士山麓という立地も含め、車やレースに関心があるなら、観戦日以外にも時間を取って訪れたい場所だ。
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Fuji Speedway