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ハシェンダ ヴィソン|三重の緑に囲まれ、名作家具と過ごす

Florence Consul
文 Florence Consul ·

三重県の緑に囲まれたハシェンダ ヴィソンは、ザ・コンランショップがデザインを監修した全6室のホテル。日本の食と手仕事が集まるVISON(ヴィソン)の一角にあり、客室はそれぞれ、芸術家やデザイナーの考えを手がかりに設えられています。私たちはバウハウスをテーマにしたDessauに滞在。IZURUN(イスルン)で夕食をいただき、敷地内の店も巡りました。

伊勢参りとあわせて訪ねる多気町

ハシェンダ ヴィソンがある多気町は、三重県のほぼ中央に位置します。広大なVISONの敷地内でも緑の多い場所に建ち、北には山並み、南には森と庭が広がります。古くから信仰を集める伊勢神宮へは、車で約30分。参拝の前後に、昔ながらの家並みに商店や郷土の味が集まるおかげ横丁を歩くのもよいでしょう。かつての巡礼路である熊野古道や、深い森と入り組んだ入江が続く伊勢志摩国立公園へも足を延ばせます。宿で静かに過ごしながら、三重の自然や文化も訪ねやすい立地です。

@Hacienda Vison Hotel
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ザ・コンランショップが手がけたハシェンダ

ホテル名のハシェンダは、スペイン南部の伝統的な農園邸宅に由来します。ザ・コンランショップが監修した建物は、農家を思わせる素朴な造りとは趣が異なり、幾何学的な線が際立つ端正な外観。室内にはミッドセンチュリーの家具や、収集品としても目を引くオブジェが置かれています。ロビーの中心にあるのは、大きなキッチン。地元のシェフを招き、夕食を作ってもらい、その調理を眺めることも、家族や友人と料理をすることもできます。料理教室にも参加でき、自宅の台所に集まるように過ごせる場所です。

@Hacienda Vison Hotel
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芸術家の暮らしや作品に着想を得た客室

客室の着想源は、ジョージア・オキーフが暮らしたアビキューの家、ル・コルビュジエがカップマルタンに建てた休暇小屋、ピカソの生まれ故郷マラガなど。ヘンリー・ムーアの彫刻を思わせる造形や、テレンス・コンランの簡潔で実用的なデザインを取り入れた部屋もあります。全室にダブルベッド2台とキッチンを備え、VISONのマルシェや近くの農園で買った食材を調理できます。1階のAbiquiuとMálagaには専用の庭があり、Málagaは犬と宿泊できる客室。犬用のベッド、食器、おやつも用意されています。

@Hacienda Vison Hotel
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私たちが泊まったのは、203号室のDessau。広さは90㎡で、大人2名と子ども2名まで宿泊できます。内装のテーマは、機能に沿って形を考えるバウハウスの理念。入ってまず目を引いたのが、マルセル・ブロイヤーのチェアとクリスチャン・デルのペンダントライトを組み合わせたダイニングでした。壁にはアニ・アルバースの作品を思わせるファブリックパネルが飾られ、現代作家による動きのある柄も目を引きます。ヘーリット・トーマス・リートフェルトのジグザグ チェアや、ブルーノ・ムナーリの照明もあり、家具の形や使い心地に自然と目が向きました。キッチンとは別にくつろぐスペースがあり、名作家具も普段の道具として使える距離感です。バスルームにはシャワーとバスタブを備えています。

農園の野菜とイベリコハムをいただく朝

朝食は客室で、緑を眺めながらいただきます。監修は、麻布台ヒルズのオルビーレストランでシェフを務める紺野真。VISONの農園で育った野菜をふんだんに使い、食べ方にもひと工夫があります。私たちの朝食には、お茶、スープ、サラダと、具をたっぷりのせたトーストが2枚。一方はすりおろしたニンジンと肉、もう一方はスクランブルエッグとイベリコハムでした。フルーツとヨーグルトも添えられます。好きな音楽をかけながら、自分たちのペースで食べられる朝食です。

客室での食事と、イスルンのバスク料理

VISONでは食材だけでなくスパイスも手に入るので、前菜を数品作ったり、小腹が空いたときに軽食を用意したりできます。その日の気分に合わせて、気兼ねなく食事を楽しめるのも、この宿でキッチンを使うよさです。

@Hacienda Vison Hotel
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外で食事をするなら、VISON内のレストランへ。私たちが訪れたイスルンは、ホテルヴィソンの最上階にあります。サン・セバスチャンの食文化をもとに、三重県とスペインの食材を組み合わせたバスク料理を作るのは、料理長の中武 亮。アケラレやアルサックで経験を積んだシェフです。セラーにはスペインワインを中心に約300銘柄、1,000本がそろいます。グラスワインのほか、シェリーやバスクのビールもあり、食後にはリキュールや食後酒を選べます。

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選んだのは、テイスティングコースのTXULLO。まずバーでカクテルを飲み、その後、厨房へ案内されました。最初のひと口は、タパスバルにならって立ったままいただきます。小さな台座に置かれた貝殻には、こんがりと焼き色の付いたひと口サイズの料理。コンロのそばで味わう私たちの目の前で、料理人たちが働いています。席に着く前から厨房の活気に触れられる、楽しい始まりでした。

次は、Refrigeratorと呼ばれる隠し部屋へ。冷蔵庫のような扉の奥で、カンパチのセビーチェをいただきました。小さなガラスの器には、薄切りのオクラとオレンジ色の粒、紫と白の花びら。簡素なテーブルだからこそ、細かな盛り付けや色合いに目が留まります。思いがけない場所で、さっぱりとした一皿を味わいました。

席に着くと、熊野地鶏が運ばれてきました。木の皿に敷いた藁の束の上に、皮が艶やかなきつね色に焼けた鶏肉。熊野市でのみ飼育される地鶏で、軍鶏の八木戸、伊勢赤どり、名古屋コーチンを掛け合わせています。赤みを帯びた肉は歯応えがあり、味も濃い。目の前で煙をまとわせた鶏肉を、バターで調理したキノコ、辛みの穏やかな柚子胡椒、卵と塩のソースとともにいただきました。

チストーラは、通常の豚肉ではなく鴨肉で作ったソーセージ。焼き色の付いた小さな丸パンにのせ、アンチョビ、ニンニク、トマト、オリーブオイルのソースを合わせています。その上を覆うのは、VISONの農園で採れた、たっぷりの若芽や野菜。石を思わせる色調の大きな陶皿に、野菜の鮮やかな色が映えていました。

サルモレホは、三重県津市の三交ハレノヒファームで育ったミニトマトを使った伝統的なトマトスープ。熟した果実のような甘さを感じます。ガラスの器に注がれた濃い赤色のスープには、小さな葉とオイルの滴が浮かび、モッツァレラとチョリソの串、ハム、パンが添えられていました。トマトの甘さに、レモンの爽やかさとクローブをはじめとするスパイスの香りが重なります。

魚料理はオオモンハタ。白い身に香ばしく焼いた皮を重ね、塩の結晶を散らしています。その下には、黄色いカレー風味のタルタルソース。若い頃、カレー店を開きたいと思っていたシェフが、その夢をこの一皿に取り入れたそうです。

青と白の陶器の鉢で運ばれてきたのは、フォアグラ。ご飯と白いトウモロコシの上に、ソテーしたフォアグラが2切れのっています。艶のある照り焼きソースをかけ、仕上げにゴマ。中武シェフが日本でアンバサダーを務めるマルティコのナバラ産フォアグラで、滑らかな口当たりと深い旨みがあります。トウモロコシの甘さやソースの甘辛さともよく合い、意外な組み合わせながら、私たちがコースで最も気に入った料理でした。

口直しのInterludeは、スイカのグラニテ。淡いピンク色の氷の粒に、地元産のブルーベリーが3粒のっています。濃い青紫色との対比が目に鮮やかで、フォアグラの後にいただく果実の爽やかさも心地よい。

美熊野牛は、表面に焼き色を付け、中心をピンク色に仕上げた一切れ。鮮やかな緑色のチミチュリソースに、くし形に切ってローストしたカボチャ、白ナスを添えています。三重県の岡田牧場で生後約36か月まで育てた、黒毛和牛の雌牛です。熊野灘を見下ろす、木々に囲まれた丘の上の牧場から出荷されるのは、年間約100頭。付け合わせを絞った皿で、肉そのものをじっくり味わいました。

食事の最後は、原点回帰〆と名付けられた冷たいうどん。シェフ自家製のからすみ、海藻、スダチを合わせています。黒い鉢に、薄切りのスダチと濃い色の海藻、琥珀色のからすみがくっきりと見えました。柑橘と磯の風味を味わうと、スペイン料理のコースの途中で、日本を旅していることを改めて感じます。

甘味の一品目は、一口抹茶ぜんざい。淡い緑色の小さなドームに艶のあるグレーズをかけ、濃い緑色の粒をひとつのせています。細身の黒いスプーンに一口分ずつ盛られ、乾燥した茶葉を散らした木のトレーで運ばれてきました。抹茶の味わいを楽しむ、小さくても手の込んだ甘味です。

卵のフランは、大きなガラス皿で。琥珀色のカラメルをまとった黄色いフランに、バニラアイスクリームがひとすくいのっています。冷たいアイスとフランを一緒にいただく、飾りすぎないデザートでした。

最後の小菓子は3種類。焼き色の付いた生地にチェリーを包んだバスクケーキ、角切りにした、密度のあるクリーミーなバスクチーズケーキ、茶色い表面に細かな溝のあるカヌレです。合わせるのは、旧伊勢国を中心に受け継がれてきた三重のお茶。この地域では、早ければ4月下旬から一番茶の収穫が始まり、伊勢の紅茶にも、品種を選んだ茶葉が使われます。バスクの菓子と地元のお茶を味わいながら、食事を終えました。

VISONで食と手仕事を巡る

VISONは、現代的な建築が並ぶ敷地に、食、健康、日本の手仕事に関わる約70の店や施設が集まる複合施設です。地元の人々も買い物や食事、休息に訪れ、ここを目当てに出かける人も少なくありません。歩いて巡れるのは、著名なシェフのレストランや国内外の菓子店、海の幸と山の幸がそろうマルシェ。オーガニック農園や、体験を楽しめる店舗にも立ち寄れます。地域に根付く食やものづくりを、今の暮らしに取り入れる手がかりが見つかる場所です。

@Hacienda Vison Hotel
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滞在を終えて

デザインへの明確な考えがありながら、肩の力を抜いて過ごせる宿でした。Dessauの家具は、眺めるだけでなく、座って使うと、その形に納得できます。三重の食材や手仕事、スペインの食文化にも触れられますが、あれこれ巡らなければとせかされることはありませんでした。快適な客室でくつろぎ、大切な人と食卓を囲む。そんな気取らない過ごし方ができたことを、よく覚えています。

印象に残った点

  • 小さなホテルならではの落ち着きと、アパートメントに泊まるような親しみやすさ。家具の配置もよく考えられ、キッチンの設備も整っています。
  • 宿の個性が伝わる、ひと工夫ある朝食。
  • 店巡りや食事、体験を通じて日本の暮らしの文化に触れられるVISON。ここを巡るために泊まる価値も感じました。

気になった点

  • ブラインドでは完全に遮光できず、早朝から客室に外の光が入ること。

宿泊料金

  • 2026年8月の客室料金は550ユーロ。

Hacienda Vison Hotel

Farm 4, 672-1 Vison, Takicho, Odaicho, Japan