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オーベルジュ ドゥ サンヴィ|奈良・桜井の田園に泊まる

Florence Consul
文 Florence Consul ·

田んぼの向こうに大和の山々が連なる、奈良の田園地帯。オーベルジュ ドゥ サンヴィは、この土地の歴史や暮らしに触れながら、ゆっくり過ごせる全9室の宿です。旅の中心は、地元の食材を使ったフランス料理。私たちはテラスで季節を感じ、桜井周辺の史跡を訪ね、食卓では奈良の味を楽しみました。

桜井で古代の足跡をたどる

サンヴィが建つのは、奈良県桜井市の市街地と田園が接する静かな場所。日本文化の源流とされるこの地域には寺社や古墳が点在し、宿を拠点に巡れます。日本最古の道といわれる山の辺の道も、歩いてみたい古道のひとつです。古典に登場する土地をたどると、緑の深い風景のなかに、酒造りや相撲にまつわる古くからの伝承が残っています。奈良や大阪にも日帰りで足を延ばせる距離。史跡巡りの合間に宿へ戻り、ひと息つけるのもよいところです。

@AUBERGE de SENVIE
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土地の伝統を受け継ぐ宿

SENVIEという名は、フランス語のSens(感覚)とVie(命)を合わせたもの。宿が掲げる承前啓後は、過去を受け継ぎ、新しい時代を切り開くという考え方です。土地の伝統を今の感覚で捉え直し、自然になじむ客室や料理、おもてなしを通じて、奈良の水や土、食材の豊かさを伝えようとしています。その背景には、千年以上にわたって自然や人の思いを伝えてきた万葉集の歌があります。景色を眺め、土地の味を確かめ、歴史に思いを寄せるうちに、日常とは違うゆるやかな時間の流れを感じました。

@AUBERGE de SENVIE
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大和の景色を眺めるスイート

客室は木の素材感を生かしたシンプルな内装で、ヨーロッパの趣もさりげなく取り入れています。全室にテラスがあり、季節ごとに表情を変える田園を眺められます。エグゼクティブスイートは2室。室内87㎡に専用テラス25㎡を備えています。ツインルーム6室とユニバーサルツイン1室にも、それぞれ小さなテラスが付いています。

私たちが泊まったのは、リビングと寝室が分かれたエグゼクティブスイート。リビングではクリーム色のソファ2台と濃い色のアームチェアが、木のローテーブルを囲んでいました。大きな窓の先には田んぼが広がり、木々に覆われた丘の向こうに遠くの山並みが見えます。木と落ち着いた色合いを基調にした室内で、目を引いたのは天井一面の吉野杉。客室にもこの土地らしさを感じました。寝室にはセミダブルベッドが2台並び、横に長い木のヘッドボードの上は落ち着いた濃色の壁紙で仕上げられています。洗面ボウルは2つあり、浴室にはシャワーとバスタブが揃っていて使いやすい造りでした。広いウッドテラスに置かれているのは、編み込みのアームチェアと丸いテーブル。風を感じ、鳥の声を聞きながら、いつまでも外を眺めていたくなりました。

大和三山を望む朝食

朝食は宿泊者限定。窓いっぱいに大和三山を望むダイニングでいただきます。奈良県産の食材を中心にしたメニューで、最初は季節のスムージー2種類。この日は人参のジュースと、大和当帰にりんごを合わせたグリーンジュースでした。野菜サラダには自家製ハムと2種類の特製ドレッシングが付き、パンやペストリーにはいちじくとゆずのコンフィチュールを合わせます。本日のスープに続く卵料理は、プレーンオムレツを選びました。特製ソースがかかり、ばあくのベーコン、ハッシュドポテト、温野菜を添えた一皿です。最後は奈良県産のフルーツカクテルに、みるく工房飛鳥のヨーグルトソースと、アジアで親しまれる穀物、はとむぎのグラノーラ。食後はお茶を飲みながら、ゆっくりと朝を過ごしました。

奈良の旬を味わうフランス料理

レストランでは、地元農家と密にやり取りしながら、奈良の伝統野菜や旬の食材を選んでいます。フランスから厳選して取り寄せた食材や紀伊半島の食材も使い、皿ごとに異なる味を楽しめます。料理の根底にあるのは、土地のものを食べることが健やかな暮らしにつながるという考え方。夜は落ち着いたダイニングで、窓の外が暮れていくのを眺めながら食事をいただきます。

@AUBERGE de SENVIE
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滞在中にいただいたのは、宿泊者向けのMenu DÉGUSTATION。アミューズに始まり、冷前菜、温前菜、魚料理、肉料理、お口直し、デザートと続き、最後に小菓子とコーヒーが出ます。同じ流れのMenu SENVIEもあり、ランチは地元農家から直接仕入れた食材を使う3つのコース。ワインのほか、地元の日本酒やクラフトビール、ジンも揃っています。スタッフは一人ひとりによく目を配っていて、食事中も心地よく過ごせました。

最初に運ばれたのは、サバ、人参、キャビアを合わせたひと口サイズのアミューズ。薄い層を重ね、その上にキャビアと小さな紫の花を載せています。隣には、ヤマトポーク、藤原京トマト、茄子を使った丸いアミューズが並びます。表面はぱりっとしていて、上には細いハーブが添えられていました。金色を帯びた小皿に載る2品で、まずは海の味と里の食材を少しずついただきます。

続く一品は、みわ馬に吉野MICA卵と、伝統的な発酵調味料のひしおを合わせたもの。金縁の小さな器を白い皿に載せ、木目の温かなトレーで運ばれてきました。赤とオレンジを基調にした盛り付けに、キャビアと淡い色の花びら。馬肉に卵の穏やかな風味がなじみ、口当たりもなめらかでした。ひしおの旨みにキャビアの塩気と磯の風味が重なり、余韻が長く残りました。

鮎のタルトレットは、薄く焼いた金色の生地に鮎と胡瓜を詰めたもの。縁には細かな波形が刻まれ、小さな葉と薄紫の花が散らされています。銀色の皿に点々と置かれた青唐辛子のソースも目を引きました。鮎の穏やかな味に胡瓜の清涼感、青唐辛子の風味を合わせた一皿。薄い生地と具材の食感にも期待が膨らみます。

鮑には古代米と大和当帰を合わせます。銅色の大きな皿の中央に、色の濃い古代米を敷き、艶のある褐色のソースをまとった鮑を載せています。上にはぱりっとした大和当帰の葉が立つように添えられ、鮑と米に軽い食感を重ねていました。飾りを抑えた盛り付けで、食材の組み合わせに自然と目が向きます。

次の魚料理は、甘鯛と鱧に、発酵・熟成させた酒粕を合わせた一皿です。浅い凹凸のある大きな白皿に、真珠のような艶を帯びた魚の身とクリーミーな付け合わせ。淡い金色のソースは軽く泡立ち、緑の葉と細い金色の飾りが添えられていました。控えめな盛り付けの一皿で、魚の穏やかな味に酒粕の香りが重なり、深い旨みとなめらかなコクを感じます。

肉料理のみわ牛は、中心にピンク色を残した焼き上がり。艶のある褐色のソースをかけ、薄く削った黒トリュフを載せています。脇に添えられた黄金色のジロール茸は、秋を思わせる色合いでした。少量のいんげんは束ねて添えられ、メニューにはよもぎの名もあります。肉を中心に、付け合わせもひとつずつよく見える、すっきりした盛り付けです。

デザートの前には、新生姜とレモングラスのお口直しが出ました。小さなガラスの器に、半透明のタピオカが浮かぶアイボリー色の一品。飾りは少なく、見た目も軽やかです。新生姜の辛みは穏やかで、レモングラスには柑橘を思わせる爽やかさがありました。次に続く果実のデザートにもよく合う組み合わせです。

デザートは目の前でフランベされ、メレンゲの表面を炎がひととき包みます。ベイクドアラスカをもとにした菓子で、焼き色のついた凹凸のある表面に、クラシックな菓子の面影を感じました。周囲には淡いソースが広がり、角切りのマンゴーとパッションフルーツの種、小さな植物の飾りが添えられています。たっぷりのメレンゲに、マンゴーの甘みとパッションフルーツの酸味。定番の菓子を南国の果実で仕立てたデザートでした。

食後の小菓子とコーヒーは、食事客専用のLe salonへ場所を移していただきます。吉野檜の家具が置かれた、木の温もりを感じる静かな空間でした。細い木の削りくずを敷いた木箱に並ぶのは、艶のあるアイシングがかかった小さなエクレア、砂糖をまぶしたフルーツゼリー、乾麺を詰めたチョコレート。私たちはお茶とともにいただき、夕食の余韻を楽しみました。食後酒など、夜にゆっくり味わいたい飲み物も選べます。

@AUBERGE de SENVIE
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滞在を振り返って

料理には地元食材へのこだわりだけでなく、日本の食文化への目配りも感じました。丁寧なサービスも含めて、滞在を通して心地よく過ごせた宿です。食事を旅の中心に据え、合間に桜井の歴史を訪ねたいときに選びたいと思います。

心に残った点

  • 日本のホテルでも、田んぼや周囲の農地をこれほど広く見渡せる宿は珍しく思いました。
  • ゆとりあるスイートと広いテラスの居心地。
  • ディナーと朝食の完成度。創意を感じる料理で、味の組み合わせにも仕上げにも納得できました。

気になった点

  • ミニバーにスナック類がなかったこと。少し奥まった立地だけに、小腹が空いたときにつまめるものがあると助かります。

宿泊料金の目安

  • 2026年8月のスイート宿泊料金は、夕朝食付きで630ユーロ。

AUBERGE de SENVIE

高家2217, Sakurai, Japan